こんにちは株式会社三河屋 田中です。今回は「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」と言う本を紹介します。
なぜ今デザイン思考が必要なのか?
ホワイトカラーを取り巻く世界的な潮流
先進国では、社会の成熟化とともに、常にイノベーションを生み出し続けなければならない状況になっています。ホワイトカラーの労働者は、新興国の安く優秀な労働力との競争に直面しています。また、人工知能の発達によって、人間がこれまで行ってきた仕事の多くが、機械に代替されるという予測もあります。
このような状況で生き残るには、オリジナルの価値をつくりだせる人材になることが必要であり、デザイン思考による創造的問題解決力がますます重要になるといえます。
21世紀に活躍するための必要なスキル
21世紀に生きる人材がグローバルに活躍するためのスキルとして、コミュニケーション、ICTとデジタルリテラシー、意思決定と学習、コラボレーション、創造力とイノベーション、クリティカル思考と問題解決が、教育先進国での「21世紀型スキル」として定義されています。創造力とイノベーションは、とりわけ大事な思考スキルとして取り上げられています。
このような流れから、ハーバードやMITなど一流のMBAにおいても、デザインスクールの学びを取り入れたプログラムが導入されるようになった。欧米のデザインスクールでは、「デザイン、ビジネス、エンジニアリング」の3つの要素が協働することでイノベーションが生まれると考えられています。
左脳と右脳の両方を活用したハイブリッド知的生産術
現在のビジネスにおいては、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど、論理が優位となる「左脳モード」が支配しているが、創造力を発揮するためには「右脳モード」も不可欠です。デザインスクールで学ぶ思考スタイルは、左脳と右脳の両方を活用したハイブリッドな思考です。両方をバランスよく使いながら、自分ならではのユニークな切り口で、「創造(=知的生産)」を日々実践することがデザイン思考の肝となります。
デザイナーの思考法
1.インプット:ビジュアルを集め、ビジュアルで伝える
まずは、デザイン思考を構成する「インプットの質」「発想のジャンプ」「アウトプットの質」という3つの要素について紹介します。
まずは「インプットの質」についてです。デザイナーはアイデアを練るためのリサーチをする際、画像や動画といったビジュアルデータを大量に集め、現場での観察やインタビューといった一次情報を吸収する。具体的なイメージに触れることで、自分のめざす最終アウトプットのヒントが見つかると言います。
重要なことは、普段、自分が接している世界とはまったく違う世界に触れることです。歴史的にも地理的にも幅広くリサーチを行い、あえて極端な好みを持つユーザーの声を拾うことで思考の幅を広げることができます。
こうした大量の情報を上手に消化するためには、ビジュアルを使って情報をノートにまとめるのが効果的です。おすすめは、ビジュアルで考え、ビジュアルで理解する思考法「ビジュアルシンキング」です。例えば、講義や会話の内容、思いついたアイデアを、文字ではなくイラストや図で表すのです。日々、イラストで表現する習慣をつけると、情報の論理構造をビジュアルに翻訳することに慣れ、自然に左脳と右脳の使い分けができるようになります。
2.ジャンプ:発想を飛躍させる
次は、さまざまなアイデアから新しくユニークな切り口を生み出すために、発想を飛躍させる段階に入ります。
デザイナーは、強制的にさまざまな組み合わせを使って発想する「新結合」や、一見違うものに共通点を見出す「アナロジー思考」、物事の既存のルールを変えてしまう「前提を壊す思考」という発想ツールを使っています。
中でも「アナロジー思考」では、すでに知っている知識と、未知の世界の知識を結びつけることがカギとなります。この思考を鍛えるには、目にしたものが何に似ているのかという「比喩」を普段から考えると良いでしょう。具体的には、設定したテーマにまつわるモノの写真を撮り、その写真から様々な要素を抽出して、自分が考えているサービスでたとえることができないかと考えるのです。アナロジー思考を加速させるには、PinterestやInstagramなどの静止画のサイトも役立つだろう。
3.アウトプット:感情に訴えかける体験デザイン
デザイナーは、「アウトプット」の段階では、伝えたい要素をシンプルにし、受け手に合ったドラマ性のある体験を表現することで、受け手の感情を揺り動かします。必要とされるのは、「凝縮フォーマット」「ストーリーテリング」「体験デザイン」という3つの要素です。
「凝縮フォーマット」とは、アイデアを凝縮するための、1枚のポスターやキャッチコピーといったフォーマットのことである。フォーマットの制約により、不要な要素を削ぎ落とすことができ、伝えたい内容のエッセンスが一目瞭然となります。
次に、「ストーリーテリング」は、できるだけ具体的なストーリーを語ることである。ハリウッドのヒット映画の脚本づくりでも使用されている、主人公が試練を乗り越えて幸せになるという「英雄の旅」というフレームワークに則ることが効果的です。
また、自分のアイデアを人に体験してもらう「体験デザイン」においては、パワーポイントのプレゼンテーションだけでなく、ポスター、ビデオ、プロトタイプ(試作品)、即興の劇という表現形式をとることもあります。ポイントは、聞き手が腹落ちする表現の仕方を考えることです。
作り手魂の学校
1.まずは手を動かす
著者がデザインの世界で学んだ「デザイン魂」は、「まずは、議論するのではなく手を動かして考える」というものである。著者が受講した「プロトタイピングメソッド」の授業によると、ありものの素材を組み合わせ、自らの手で形にしたものを人に見せることで、改善点や自分一人では気づけない新たな視点を得ることができるという。試作品は不完全でもかまいません。アイデアを形あるものに変え、仲間とブレーンストーミングをすることにより、右脳が刺激され、新たな連想が生まれるなどの効果が期待できる。
2.カオスを楽しむ
デザインの世界の特徴は、ビジネスの世界と比較して、仕事の進め方の構造が緩いことです。状況に合わせて柔軟にスケジュールを変更し、最初に立てた仮説を覆すことも日常茶飯事です。仕事の全体像をしっかり理解することに慣れているビジネスパーソンは不安になるかもしれません。しかし、この不完全でカオスな状態こそ、新たなアイデアが生まれやすい場でもあります。
企画段階で価値判断を行わずに、カオスを意図的につくり出し、楽しむという発想も、ときには重要なのです。
羅針盤としてのデザイン思考プロセス
1.デザイン思考プロセス
デザイン思考が実際のビジネスに役立つ場面は、既存のビジネスの枠を超えた新たな商品やサービスの開発が必要になったときや、新規事業の創造、ブランドの立て直しのときなどです。
デザイン思考のプロセスは、リサーチ、分析、統合、プロトタイピングの4つのモードを短期間で何度も行き来しながら進んでいきます。決まったステップ通りにやれば良い結果につながるというわけではなく、各モードを行き来する中で、解決策となるアイデアの質を上げていくのです。
重要なのは、「具体化と抽象化」、「ユーザーの現実と、自分たちがつくりたい未来」という二極を行ったり来たりすることである。こうして、商品やサービスをどんどん具体的なものにし、お客さんに見せながら率直な意見をもらうことで、さらなる改善につなげることができます。
2. 4つのモードの特徴
リサーチ、分析、統合、プロトタイピングという4つのモードはそれぞれ、旅人、ジャーナリスト、編集者、クラフトマンにたとえられます。各モードの特徴を紹介します。
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・旅人(リサーチ):旅人のように非日常の場を訪れ、体全体で現場を感じ、自分の知らない世界に徹底的に浸る。そして、現地で感じた興奮を残すためにメモを取り、その場を写真におさめる。
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・ジャーナリスト(分析):旅の内容を振り返り、正しい事実と自分なりの解釈を分析し、消化していく。
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編集者(統合):分析する中で得た事実や新たな切り口をもとに、ユーザーの課題や価値観を、切れ味の鋭いキャッチコピーと印象的な写真によって1枚の絵で表現する。
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クラフトマン(プロトタイピング):イメージした世界観の中で実在したらいいなと思える商品やサービスのアイデアを、手を動かして形にする。
これらすべてのモードを一人でこなすのは大変ですが、いずれかの分野が得意な人を集めて、チームをつくり、得意な人がリードしてプロジェクトを回すことが重要です。
デザインというビジネスキャリア
越境人材という道
デザインスクールがめざしているのは、デザイン、エンジニアリング、ビジネスの3つの専門性が交わる「越境人材」を育成することです。ここでのデザインとは、「人間の生活にとって理想的な姿を描く力」のことです。そしてエンジニアリングとは「理想的な姿への解決策を実現させる力」を、ビジネスとは「解決策の効果を最大化させる仕組みをつくり、人を動かす力」を指しています。
様々な人々が協働してイノベーションをめざす時代において、強い専門性を持ちながらも、専門が異なる人ともつながり、様々な役割を果たせる人材がこれからますます必要になってきます。その際、デザイン思考は、強力な武器になってくれるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?インターネットがまだ普及してない頃、デザインとは一部の人にしか関係がないような物だったのかもしれません。しかし今やWEBサイトやアプリは直感的に使いにくいものは誰も使ってくれない時代になりました。 仕事においても90年代以前の気合いと根性でやり切るということも今のZ世代の若者には響かない時代になりました。デザインとは視覚的に見せるものもあれば組織作りや制度、働く環境など見えないところもあります。本書ではその両方がこれからの時代は必要になってくると説いています。皆さんはどんな人材になりたいですか?是非本書を一読して考えてみることをお勧めします!
参考文献 「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由/クロスメディア・パブリッシング/佐宗邦威」
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